

家づくりを始めた人の多くが、直面する大きな悩みがあります。
それは 「土地の向きをどう選ぶか」 という問題です。
「南向きが良いって聞いたことがある」
「でも北向きの土地のほうが安いって本当?」
「実際、どっちを選べば後悔しないの?」
不動産会社や住宅営業からもたくさんの情報が入ってくるため、逆に迷ってしまう方は少なくありません。
そこで本記事では、2つの具体的なケースである 南側道路の土地と北側道路の土地 を比較しながら、それぞれのメリット・デメリット、そしてどんな人に適しているのかをご紹介していきます。
南側道路の土地(30坪・3,500万円)

開放感・日当たり・資産価値を重視する人にぴったり
まずはAの南側道路の土地から見ていきます。南側道路とは、敷地の南側が道路に面している土地のことです。一般的に “最も人気が高く価格も高い” 属性を持っています。
その理由を詳しくご紹介していきます。
南側道路の土地のメリット

一年中日当たりが良い、明るい家が作りやすい
南側に建物がなく開放されているため、光が遮られにくく明るいリビングを作りやすい のが最大の魅力。建築計画では、リビングやダイニング、和室など人が長く過ごす部屋を南側に配置するのが一般的です。南側道路の土地の場合、道路が光を遮らないため、家の南面に大きな窓を採用しても、しっかり採光を確保することができます。
特に以下のような特徴があります。
- 冬場でもしっかり日が差し込む
- 暖房効率が上がり、光熱費を抑えられる
- 家の中が明るく心理的にも開放的に感じられる
- 部屋が明るく、植物も育ちやすい
「明るい家にしたい」という希望がある場合、南向きは非常に魅力的な選択肢のひとつです。
資産価値が高く、売却時にも有利
不動産の市場では、南側道路は常に人気が高いため、価格が落ちにくい資産としても優秀です。
同じエリアで同規模の北側道路と比較すると、南側道路の土地のほうが査定額が高くなりやすいと言われています。
将来、
- 子どもが巣立った後に家を売却したい
- ローンを組むから資産価値も気になる
- 安定した資産として土地を持っておきたい
このような考えを持っている人にとって、南側道路の土地は非常に魅力的な選択となります。
庭や駐車場が広く取れ、アウトドアに最適
南側に広いスペースを確保することで、庭・駐車場・BBQ・家庭菜園 など、外の楽しみが広がります。日当たりが良いため、家庭菜園やガーデニングを楽しみたい方には特におすすめです。また、子どもが外で遊べる場所が欲しい、ウッドデッキを作りたい、外での時間を大切にしたいという家庭にも最適です。
南側道路の土地のデメリット

南側道路の土地はメリットばかりのように見えるかもしれません。しかし、そんな優秀な南側道路の土地にもいくつかデメリットがあります。
土地価格が高い
南側道路の土地は人気が高いです。そのため、同じエリアの北側道路の土地と比較すると100〜300万円以上高くなるケースも珍しくありません。住宅購入費用の総額から土地に利用できる予算をしっかりと考えたうえで、選択する必要があります。
プライバシーが気になりやすい
南側にリビングを配置し、大きい窓を設ける場合、道路からの視線が気になる可能性があります。特に、駅近等の人気エリアで検討する際は交通量が多い確率が高く、せっかく開放的な南側に大きな窓を設けても、閉めっぱなしになってしまっているというケースも少なくありません。もちろん、こういった場合は高めのフェンスや目隠し植栽、庭のレイアウトを工夫するといった外構計画で十分対策することができます。しかし、その場合は外構にお金をかけることができる資金的な余力が必要です。多くの方が、土地が予算より少し高くなってしまった。建物も魅力的にしたい!という気持ちが強く、なかなか外構計画まで予算が回らないものです。後から使える予算がない!?といった後悔をしないために、ぜひ土地購入の際は外構費用についても意識を向けてみてください。
子どもの安全対策が必要
庭が道路側にあるため、小さな子どもの飛び出し事故には注意が必要です。こちらも外構計画によるフェンスや植栽を活用し、“行動の境界をつくっておく” ことが大切になります。
北側道路の土地(32坪・3,000万円)

コストを抑えて、南側をフル活用したい人におすすめ
次に、北側道路の土地の特徴を詳しくご紹介していきます。北側道路の土地は一見マイナスに見られることもありますが、実際は コスト・間取り・プライバシー を重視する人には、とてもメリットのある土地なのです。
北側道路の土地のメリット

価格が安い!コスト重視に最適
北側道路は南側道路に比べると人気が分散するため、価格が安く設定されていることが多いです。
南側道路の土地と同じ金額であれば、「より広い土地を選ぶことができる」または「土地の価格を少し抑えて、住宅の設備や収納にお金を回したい」、「建物内部の仕様のグレードを上げられるかも」といったメリットが得られます。「予算を抑えつつ理想の家づくりをしたい」という方には大きな魅力です。
プライバシーを守りやすい
北側に道路があるため、リビングを南側に配置しても、道路から見えにくくプライバシーを保護したプランニングをすることができます。大きな窓を設置しても通行人の視線を気にしにくく、落ち着きのある生活空間を実現できます。
南側をすべて居室スペースにできる
北側道路の土地は、玄関を北側に配置するケースが一般的です。そのため、南側を丸ごと部屋として利用できます。リビングや子ども部屋、主寝室等といった部屋も南向きにできるため、間取りの自由度が高く、家全体を明るく作りやすいというメリットがあります。
北側道路の土地のデメリット

北側道路の土地もデメリットがあります。デメリットを理解し、購入するかを選択することが大切です。
採光が十分に確保できない場合がある
土地は周辺環境で良し悪しが変わります。例えば、北側道路の場合は南側に隣接する家が近く、思っていたほど日が入らないというケースもあります。ただし、こちらについても建物の設計によって改善することができます。例えば、「高い位置に窓を設置する」もしくは「2階リビングにする」、「吹き抜けを採用する」などの工夫で採光は十分確保することができます。
駐車場スペースが狭くなることがある
玄関と駐車場を北側にまとめるケースが多いため、敷地が細いとやや手狭になる可能性があります。ただし、ゆとりのある敷地であれば問題ないケースも多いです。
南側道路の土地と北側道路の土地の比較

あなたの価値観はどっち?
ここまで、メリット・デメリットを詳しく見てきました。では、結局どちらを選べばよいのでしょうか?答えはとてもシンプルで、あなたがどんな暮らしをしたいかで決めるのが正解です。
▼ 南側道路が向いている人
- とにかく「明るいリビング」が欲しい
- 資産価値を重視したい
- 庭でBBQや家庭菜園など外遊びを楽しみたい
- 開放感のある住まいが理想
▼ 北側道路が向いている人
- 予算を抑えたい
- 南側をすべて居室スペースにしたい
- プライバシーを重視したい
- 落ち着いた生活環境を作りたい
- 間取りの自由度を高めたい
まとめ
土地選びは、家の満足度を大きく左右する重要な決断です。ただし、正解はひとつではありません。「明るさ」や「開放感」を重視するなら南側道路。「コスト」や「プライバシー」を重視するなら北側道路。どちらも魅力があり、どちらが優れているというわけではありません。また、土地の良し悪しは向きだけで決まるものではなく、周辺環境や隣接する建物、道路の交通量などによっても大きく変わります。
大切なのは、自分と家族がどんな生活をしたいのかという視点で選ぶことです。そして、理想の暮らしがイメージできてきたら、いきなり土地探しを始めるのではなく、まず住宅会社に「この暮らしを叶えるにはどれくらいの建築費が必要なのか?」を相談してみましょう。必要な建築資金を把握してから土地探しをスタートすることで、無理のない資金計画と理想の暮らしの両立ができます。
さらに、可能であれば建物を設計する住宅会社と一緒に二人三脚で土地を探すことで、間取りの可能性や予算バランスを確かめながら、安心して選ぶことができます。ぜひ後悔のない土地選びを進めてください。
