
マイホームを購入する際、多くの方が利用するのが「住宅ローン」です。
住宅ローンとは、銀行や信用金庫、住宅金融支援機構などの金融機関から住宅購入の資金を借り入れ、長期間(20〜35年ほど)かけて返済していく仕組みです。
ただし、「どんな手順で借りられるのか」「審査はどのくらい時間がかかるのか」「いつお金が振り込まれるのか」など、初めての方には分かりにくい点が多くあります。
この記事では、初めて住宅ローンを利用する方に向けて、申し込みから引き渡しまでの流れをステップごとに分かりやすく解説します。
住宅ローンとは?

「住宅ローン」とは、住宅を取得するために、金融機関からお金を借りる仕組みのことです。長期間にわたり少しずつ返済していくため、無理なくマイホームを購入することができる制度です。
代表的なローンの種類には、次のようなものがあります。
- 銀行ローン(民間金融機関)
各銀行や信用金庫が取り扱うローンで、金利や条件が幅広いのが特徴です。 - フラット35
国が支援する長期固定金利ローン。返済額が一定なので、将来設計を立てやすい点が魅力です。
また、金利のタイプにも大きく2種類あります。
- 固定金利型
返済期間中の金利が変わらないため、毎月の返済額が一定で安心して返済計画を組むことができます。 - 変動金利型
金利が経済状況によって変化するため、低金利時には有利ですが、上昇リスクもあります。そのため、余裕をもった返済計画を組む必要があります。
どの住宅ローンを選ぶかは、家計の安定性やライフプランに合わせて検討することが大切です。
住宅会社や金融機関に早めに相談し、自分たちに合った借り方を見つけましょう。
ステップ①:事前審査(仮審査)

住宅ローンの第一歩は「事前審査(仮審査)」です。これは、「自分がいくらまで借りられるのか」「金融機関から問題なく融資を受けることができるか」を確認するための審査です。
▶️審査でチェックされる主なポイント
- 年収、勤続年数、職業
- 他の借入(車のローン、カードローンなど)の有無
- クレジットカードや携帯料金の支払い履歴
- 借入希望額と返済計画
この段階では、「住宅ローンの仮申込み書」「本人確認書類」「年収確認資料(源泉徴収票など)」を提出します。審査期間は早ければ1日〜7日程度で通知されます。事前審査が通ると、購入できる物件の価格帯が明確になるため、家探しがスムーズになります。なお、複数の金融機関に同時に申し込むことも可能です。金利や条件を比較して、自分に合った金融機関を選びましょう。
事前審査を後回しにするリスク
マイホーム探しの初期段階で、「まず理想の物件を見つけてからローンを申し込もう」と考える方もいます。しかし、この考え方には大きなリスクがあります。
希望物件の契約ができない
希望の物件が見つかっても、事前審査が通っていないと買付申込(購入希望)を入れても契約を進められないことがあります。不動産取引では、購入希望者が複数いる場合、「住宅ローンの事前審査が通っている人」から優先的に契約が進むのが一般的です。そのため、事前審査が遅れてしまうと、せっかく出会えた理想の住まいを他の購入希望者に先を越されてしまうこともあります。特に人気エリアや駅近物件などでは、「翌日には別の方に決まってしまった」というケースも少なくありません。
「借りられると思っていたのに…」という落とし穴
「自分は収入も安定しているし大丈夫」と思っていても、実際に審査を受けてみると、希望金額まで借りられないことがあります。その場合、「想定より融資額が少なくなり、希望していた物件を購入できない」、「プランや設備のグレードを下げざるを得ない」、「長期間住宅会社と打ち合わせをしていたのに、再計画が必要になる」…といった事態に陥り、今までの労力が無駄になってしまうこともあります。
事前審査を早めに行うことは、単に「借入可能額を知るため」だけでなく、安心して家探しを進めるための第一歩です。審査を通しておくことで、「予算の上限」が明確になり、「購入申込時の信頼性」が高まるといったメリットが得られます。特に人気のエリアや新築分譲地を検討している方は、早めの事前審査が成功のカギになります。
ステップ②:物件を決定し、売買契約を締結する

事前審査に通過したら、希望する住宅を選び、「売買契約」を結びます。注文住宅で土地から購入するのか完成している分譲住宅・中古住宅を購入するかによって、注意するポイントは異なりますが、ここでは共通して確認した方が良い内容について、ご紹介を致します。
契約時に確認するポイントのひとつが「ローン特約」が付いているか。この「ローン特約」とは、「もし住宅ローンの本審査で融資が通らなかった場合、契約を解除できる」という条項で、買主を守る役割を果たします。
▶️契約時に必要なもの
- 手付金(売買価格の5〜10%が目安)
- 実印、印鑑証明書
- 身分証明書
また、契約書に記載された「支払いスケジュール」や「引き渡し日」は、後のローン手続きに関わる重要事項です。不明点があれば、その場で担当者に確認しておきましょう。
ステップ③:本審査

次に、金融機関へ「本審査(正式審査)」を申し込みます。本審査では、事前審査よりも詳しい個人情報や物件情報をもとに、返済能力と担保価値を審査します。
▶️本審査に必要な主な書類
- 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)
- 源泉徴収票(直近2〜3年分)または確定申告書
- 住民票、印鑑証明書
- 売買契約書、重要事項説明書
- 健康診断書(団信加入時)
審査期間はおおよそ1〜2週間程度です。この本審査をクリアすれば、ローン契約・融資実行へと進むことができます。
ステップ④:金銭消費貸借契約(ローン契約)を締結

本審査に通過したら、金融機関と正式に「金銭消費貸借契約(きんせんしょうひたいしゃくけいやく)」を結びます。この契約により、借入金額や金利、返済期間、返済方法などが確定します。
▶️契約時のチェックポイント
- 金利タイプ(固定金利・変動金利・ミックス)
- 返済開始日・返済期間
- ボーナス返済の有無
- 団体信用生命保険(団信)の内容
契約書には専門用語が多く登場するため、不明点があれば住宅会社や金融機関に確認しながら進めることが大切です。
ステップ⑤:引き渡し・返済スタート

金銭消費貸借契約が完了すると、金融機関から売主へ購入代金が支払われます。このとき、「所有権移転登記」や「抵当権設定登記」などの手続きも同時に行われ、正式にマイホームの所有者となります。
▶️引き渡し時に必要な手続き
- 残代金の支払い(融資実行)
- 登記書類の確認
- 鍵の受け取り
- 火災保険・地震保険の加入
引き渡し後は、ローン返済が翌月または翌々月からスタートします。
つなぎ融資・分割融資について簡単に理解しておこう

住宅ローンは基本的に、建物が完成し、引き渡しのタイミングで一括で融資が実行されます。しかし、注文住宅の場合は、建築の途中で「土地代金」や「着工金」「中間金」「引き渡し金」など、複数回の支払いが必要になります。このような場合に利用されるのが、つなぎ融資や分割融資です。
- つなぎ融資
最終的な住宅ローン実行までの間、建築中の支払いを一時的に立て替えてくれる融資 - 分割融資
住宅ローンを複数回に分けて実行し、建築段階ごとに支払いができる仕組み
利用する金融機関や住宅会社によって対応が異なりますが、特に注文住宅を建てる場合は「中間金の支払いタイミング」について事前に確認しておくことが大切です。建築スケジュールと支払いスケジュールをしっかり把握しておくことで、資金計画に余裕を持って進められます。
まとめ
住宅ローンは、20年・35年・50年といった長期間にわたる大切な契約です。マイホームという大きな買い物だからこそ、事前に知識を身につけ、心の準備をしておくことで、落ち着いて家づくりを進めることができます。特に「事前審査」は後回しにしてしまう方も多いので注意です。事前審査を遅らせてしまうと、手続きに必要な時間が足りなくなったり、住宅ローンをしっかり比較・検討する余裕がなくなってしまうこともあります。そんな後悔を少しでも減らすためにも、今のうちから事前準備を始めることをおすすめします。そして、分からないことや不安なことがあれば、ぜひ住宅会社の担当者や金融機関に気軽に相談してみてください。
