ZEH住宅とは?|2027年から始まる新ZEH基準とメリット・デメリットを解説

近年、ハウスメーカーや住宅展示場などでよく耳にする「ZEH(ゼッチ)住宅」。
「光熱費が安くなる」「環境に優しい家」などと聞くけれど、実際のところ──ZEH住宅ってどうなの?と感じている方も多いのではないでしょうか。

太陽光発電や断熱性能の向上、そして国からの補助金など、ZEHにはたくさんのメリットがある一方で、「初期費用が高い」「本当に元が取れるの?」という疑問の声もよく聞かれます。これから家づくりを検討している方にとって、「ZEHを選ぶべきか、それとも普通の住宅でいいのか」は大きな悩みどころですよね。

そこで今回は、ZEH住宅の基準・仕組み・メリット・デメリットを、これから住宅購入を検討される方に向けて分かりやすくご紹介いたします。

目次

「ZEH(ゼッチ)住宅」ってなに?

「ZEH(ゼッチ)」とは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略です。直訳すると「エネルギーをゼロにする家」という意味です。つまり、自分の家で使用する電気量と、自分の家で創ったエネルギー量が同等になり、1年間で消費するエネルギーの量を実質的にゼロ以下にできる家が「ZEH住宅」と呼ばれます。

例えば、太陽光発電で電気をつくり、断熱性の高い家で冷暖房の使用を抑えることで、結果的に「使用するエネルギー」よりも「つくるエネルギー」が多くなるというイメージです。

国は2030年を目標に、新築住宅の平均でZEHの実現を目指しており、今後の家づくりでは“当たり前の基準”になるといわれています。

ZEH住宅の基準と仕組みをやさしく解説

ZEH住宅は、「再生可能エネルギー等を除き、基準一次エネルギー消費量から 20% 以上の一次エネルギー消費量を削減する」こと。また、「再生可能エネルギー等を加えて、基準一次エネルギー消費量から 100%以上の一次エネルギー消費量削減」すること、という基準が設けられており、これらを満たすことでZEH認定を受けることができます。この基準を満たすポイントは大きく3つです。

(1)断熱性能──熱を逃がさない家づくり

ZEHの基本は、できるだけエネルギーを使わない家にすること。そのために必要なのが「断熱性能」です。壁・屋根・床・窓などの断熱性能を向上させ、外気の影響を最小限に抑えることで、冬でも暖かく、夏でも涼しい室内を実現します。

この「断熱性能」を示す指標が「UA値(外皮平均熱貫流率)」です。これは、数値が低いほど断熱性が高いことを意味します。ZEHでは、地域ごとに定められたUA値の基準を満たさなければならず、現行では断熱等級5以上の水準が適用されています。

(2)高効率設備──使うエネルギーを減らす

どんなに断熱性能を高めても生活する上で電気やガスを使用します。そこで重要になるのが「高効率な設備機器」です。具体的には、高効率エアコン(省エネ型冷暖房機)、エコキュートやエネファームなどの高効率給湯器、LED照明、熱交換型換気システム等を採用します。これらを組み合わせることで設備効率を向上させ、家庭全体のエネルギー消費を削減します。

(3)創エネルギー──太陽光で電気を「つくる」

そして、ZEHの最大の特徴が「エネルギーを自分でつくること」です。主に太陽光発電システムを屋根に設置し、自家発電を行います。発電した電気はまず家で使い、余った分は蓄電池に貯めたり、電力会社に売ることができます。これによって「年間のエネルギー消費量が実質ゼロ以下」になるのです。

ZEH住宅のメリット──実際に暮らすとどうなる?

光熱費が大幅に節約できる

ZEH住宅は、太陽光発電による「自家消費」で電気代を抑えられます。特に電気代が高騰している今、電力を買わずに済む時間帯があるのは非常に大きなメリットと言えるのではないでしょうか。また、発電して余った電気を売電することもできれば、蓄電池を導入し、夜間の電気代の削減にも繋げることができます。

一年中快適に過ごせる

高断熱・高気密なZEH住宅は、室内の温度が外気の影響を受けにくく、部屋ごとの温度差が少ないのが特徴です。冬のヒートショック(急な温度差による体への負担)を防ぎ、健康面でもメリットがあります。また、冷暖房の効きが良いため、エアコンの設定温度を下げすぎる・上げすぎる必要がなく、快適で経済的です。

環境にやさしい住まい

ZEHは地球環境にも貢献します。太陽光などの再生可能エネルギーを利用し、CO₂排出を減らすことで、カーボンニュートラル社会の実現に寄与します。「エコな暮らし」をしたい方、子どもの未来を考える方にはぴったりの住宅です。

補助金や税制優遇が受けられる

ZEH住宅には、国や自治体からの補助金制度があります。条件を満たせば、1戸あたり60〜100万円前後の補助金が受けられることもあります。また、ZEH基準を満たすことで、住宅ローン控除や固定資産税等といった税制面での優遇が受けられるケースもあります。

💡 補助金は毎年変動するため、建築前に最新情報のチェックが必要です!

ZEH住宅のデメリット──知っておくべき注意点

初期コストが高い

ZEH性能を満たすためには、太陽光発電システム・高断熱仕様・高効率設備など、初期投資が増える傾向にあります。だいたい一般住宅よりも100万〜300万円ほど高くなるケースやメンテナンスコストを心配されて断念される方もいらっしゃいます。

天候や立地に左右される

太陽光発電は天候の影響を受けるため、曇りや雨の日が続くと発電量が落ちてしまいます。また、屋根の向きや周囲の建物の影によっても発電効率が変わるため、敷地条件に合った設計が大切です。

設計の自由度が少し下がることも

断熱性能を確保するために、窓の配置や大きさに制約が出る場合があります。また、太陽光パネルと設置する屋根面のの傾斜方向等といった制約も加わり、設計が制限されることもございます。ただし、最近ではデザイン性と性能を両立できるハウスメーカーが増えていますので、事前に太陽光発電を設置したい旨を伝え、土地探しや設計できちんと考慮して提案してくれる会社も多いので、心配には及びません。

2027年から始まる予定の“新ZEH基準”とは?

最近、政府や業界で話題になっているのが、2027年度から適用される予定の「新ZEH(または GX ZEH)」基準案です。現行のZEH基準が見直され、より高い性能・設備が求められるようになる可能性が高まっています。

以下は、現在報じられている案の主な変更ポイントです(最終決定ではない点にご注意ください)。

項目現行ZEH基準新ZEH(案)での強化内容
断熱性能断熱等性能等級5(外皮性能)断熱等性能等級6相当が標準化へ
一次エネルギー削減率再エネを除く削減で20%以上35%以上への引き上げが検討中
設備要件太陽光発電の導入など蓄電池の設置、HEMS(高度エネルギーマネジメント)の導入が必須化される方向

このように、新ZEH案では「断熱性+設備面」で格段に要求水準が上がる見込みです。特に、蓄電池の設置やHEMS導入の義務化は、単なる省エネ住宅から“エネルギーの自律運用ができる家”への進化を意味します。このような基準強化が近づく中で、これから家づくりする人にとっては「どの住宅性能基準で家を建てるのか」という判断材料にもなるのではないでしょうか。

まとめ

ZEH住宅は、「光熱費を抑えられる」「快適で健康的」「環境にやさしい」といった多くのメリットを持ち、これからの家づくりに欠かせない存在となっています。さらに、2027年から導入が予定されている新ZEH基準(GX ZEH基準)により、住宅の性能やエネルギー効率は、これまで以上に高いレベルが求められる時代へと進んでいきます。
現時点で住宅を建てる場合でも、「将来の新基準に近い性能」を意識した設計を取り入れておくことで、長く安心して快適に暮らすことができます。エネルギー価格の変動や自然災害など、暮らしを取り巻くリスクが高まる今こそ、自らエネルギーをコントロールできる住まいが、家族の安心と生活の安定を支える鍵となります。
これから家づくりを始める方は、ぜひ「ZEHから新ZEHへ」──未来を見据えた住まいづくりをご検討ください。

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