
近年人気のシューズクロークは便利そうに見えますが、実際のところ「どこまで必要なのか」「本当に使い勝手が良いのか」気になる方も多のではないでしょうか。シューズクロークは便利な一方で、広さや動線を間違えると「思ったほど使わなかった」「湿気がこもって後悔した」という声も多い部分です。ポイントは、「家族の靴・外物の総量」と「玄関〜室内の動線」を数値で把握してからサイズを決めると後悔しません。
この記事では、実際の暮らしを想像しながら、シューズクロークが本当に必要かどうか、そして後悔しないためのポイントを具体的にお伝えします。
玄関収納が住み心地を左右する?

玄関は来客が最初に目にするだけでなく、毎日の生活で外出の際に必ず通る場所でもあります。しかし、一般的に玄関は視界が狭く物が1つ増えるだけで散らかって見えがちです。そのため、靴や傘、子どもの遊び道具などが散乱すると、一気に生活感が出てしまいます。また、朝の忙しい時間に子どもの靴が見つからず玄関がごちゃごちゃしていると、家族全員の気持ちに余裕がなくなってしまいます。逆に、すっきり片付いた玄関なら「いってらっしゃい」と笑顔で送り出せる空気が生まれます。だからこそ、「玄関収納をどのように計画するか」という収納の“隠す力”が住まいの快適さと空間価値を左右します。
後悔例
- 棚の奥行きが深すぎて靴が二重置きになり、出し入れが面倒
- 通路が狭くてベビーカーや大容量買い物袋が通らない
- 換気計画が不十分で湿気・臭いがこもる
シューズクロークとは?暮らしに寄り添う2つのタイプ

シューズクロークは、玄関横に作られる靴や外物専用の収納スペースです。大きく分けると2種類あります。
ウォークイン型
玄関の一角に入って靴を選び、また同じ場所から出る一方通行タイプです。収納量を確保しやすく、省スペースで作りやすいため、シンプルな間取りにも取り入れやすいのが特徴です。
- 向いている人:靴や外物が多い/来客動線と分けたい
- 注 意:行き止まりになるため、朝の渋滞が起きやすい
ウォークスルー型
玄関から入って、そのまま廊下や洗面室等といった「玄関→SIC→廊下や洗面・パントリー」へ抜けられる回遊動線を持ちます。たとえば「帰宅して靴をしまい、そのまま洗面所へ直行して手を洗う」といった流れがスムーズにできるのが大きな魅力です。小さなお子さんがいる家庭や、買い物帰りに荷物をさっと置きたい人に人気があります。
- 向いている人:買い物袋をすぐ置きたい/子どもの泥汚れを室内に持ち込みたくない
- 注 意:通路幅の確保が大切
何を入れる?“持ち物の見える化”から始める

シューズクロークの計画前に確認しておきたいのが、シューズクロークに「何を?」「どれくらい?」収納するのかです。また、心配な方は余裕をもってスペースを取ろうとされることが多いですが、シューズクロークを広く取るには、家の他のスペースの面積を削るのか、予算を上げて家全体の面積を大きくするのかの2つの選択肢になります。そのため、なんとなく広い方が安心!と考えるのではなく、現在の持ち物の確認と将来の予測、ある程度、物が増えた時に古いものは捨てることをイメージに持ち、必要な広さを考えましょう。
靴の保有量の目安
家族ごとに靴の数は違いますが、一般的には次のように考えると計画しやすくなります。
家族構成 | 靴の目安 | 備考 |
大人 | 1人あたり10〜15足 | 通勤靴、スニーカー、季節用など |
子ども | 1人あたり5〜10足 | サイズ変化が早く季節で変動 |
来客用・季節物 | 10〜20足分 | 長靴、ブーツ、サンダルなど |
例:4人家族の場合
大人(2人×12足)+子ども(2人×8足)+予備(15足)= 約55足
→ 目安50〜60足分の収納が必要になります。
靴以外の“外物”も忘れずに
靴以外にどんなものを収納したいかをリストアップしておくと、シューズクロークの設計がより現実的になります。
- ベビーカーや三輪車
- 子どもの外遊びグッズ
- 部活やスポーツ用のバッグ
- キャンプ用品やアウトドアギア
- スノーブーツやレインコート
- ゴルフバッグ
- 工具やガーデニング用品
- 非常用持ち出し袋
ここで大切なのは「サイズを測ること」。特にベビーカーやゴルフバッグのような大きなものは、最大寸法をメモしておくと必要帖数の根拠になります。
どれくらいの広さが必要?家族構成で考える

シューズクロークの広さは、家族の人数や持ち物によって大きく変わります。そのため、シューズクロークは「広ければいい」というものではありません。帖数・通路幅・棚の設計の3点がバランスよく計画されていることが、使い勝手を左右します。
広さ(帖数)の目安
2人暮らしなら1帖程度でも十分なことが多いですが、4人家族で子どもが活発に活動していると2帖は欲しくなります。アウトドア派なら2.5帖ほど確保すると安心です。ただし、同じ帖数でも、通路幅と棚の配置次第で快適さはまったく違うことを忘れないようにしましょう。
- 2人家族 → 1帖前後
- 4人家族 → 1.5〜2帖
- アウトドア用品などが多い家庭 → 2〜2.5帖
通路幅は“最重要ポイント”
シューズクロークの使い勝手の良さに影響する大切なポイントは通路幅です。どんなに収納量が多くても、物を入れたり取り出したりする空間が狭いと不便に感じます。そのため、人が荷物を持って通るなら最低でも90cm、ベビーカーやキャリーバッグを想定するなら1m以上欲しいところです。ここをケチると、いくら帖数を確保しても使い勝手が悪く、後悔するポイントになります。
- 人が荷物を持って通れる最低ライン
→ 80〜90cm - ベビーカーや大きなバッグを想定
→ 100〜110cm - すれ違いも快適にしたいなら
→ 110〜120cm
棚の寸法と可動設定
シューズクロークを快適に使うには、棚の設計も重要です。靴の高さに合わせて棚板の間隔を変えられる「可動棚」にしておくと、ブーツの季節もローカットのスニーカーの季節も対応できます。
また、棚の奥行きも見落としがちなポイント。30cm程度で十分ですが、長靴やスポーツバッグを置きたいなら40cm以上を確保するのがおススメ。さらに便利なのは、一角にハンガーパイプを取り付けること。コートやレインコートを玄関先で脱ぎ、そのまま掛けられるので、花粉や雨の湿気を室内に持ち込まずに済みます。
- 奥行き
- 一般的な靴
→ 30〜35cm - 長靴やブーツ
→ 40〜45cm
- 一般的な靴
- 棚間の高さ
- ローカットの靴
→ 18〜22cm - 厚めのスニーカーやハイカット
→ 23〜26cm - ブーツ
→ 45〜50cm
- ローカットの靴
換気計画も忘れずに

シューズクロークは閉じられた小さな空間になりやすいため、換気計画が欠かせません。小窓を設けるか、換気計画で空気の流れを作っておくと、靴の臭いや湿気を防げます。
- 24時間換気の取り込みまたは小窓で“空気の入口と出口”を明確に
- 床・壁素材
拭き取りやすいタイル/フロアタイル、吸放湿性のある仕上げ(例:調湿建材)を一部に - 置き型対策
珪藻土トレイ、活性炭脱臭剤、靴の乾燥機
まとめ
シューズクロークは、あると確かに便利な空間です。しかし、ただ広ければ良いわけではありません。大切なのは「どんな暮らし方をしたいか」をイメージし、持ち物の量と動線に合わせた設計をすることです。通路幅を確保し、換気や棚の可動性を工夫すれば、家族の暮らしに寄り添う最高の玄関収納になります。逆に、物が少ない家庭なら大きなシューズクロークは不要かもしれません。その場合は下駄箱や縦型の収納を工夫すれば十分対応することができます。シューズクロークは「欲しいかどうか」ではなく「暮らしに合っているか」で決めるもの。あなたの生活スタイルを思い描きながら、後悔しない玄関収納を計画してみてください。