
家づくりを考え始めたとき、多くの方が最初にチェックするのは「建物本体の価格」ではないでしょうか。しかし、家づくりにかかる総費用は建物の価格だけでは決して収まりません。むしろ、最初に提示される“建物本体価格”は、総額の6〜7割程度にすぎないことがほとんどです。
「え、ここまで予算に入っていると思ったのに…」
「あとからこんな費用が必要だなんて聞いてない!」
そんな後悔をしないためにも、家づくりに必要な費用の全体像を理解しておくことが非常に大切です。この記事では、住宅取得時に必要な費用について分かりやすくご紹介していきます。
家づくりの費用は「本体価格」だけではない
家づくりにかかる費用というと、皆さんはどのような費用をイメージされるでしょうか。
わたしたち住宅会社では、住宅取得費用を大きく4つに分類してご説明しています。
- 家そのものの工事費である本体工事費
- 本体に含まれない工事費である付帯工事費
- 建築工事とは直接関係しないが必ず必要となる諸費用
- 住むための土地を購入する土地購入費
この4つが揃って、初めて家づくりの“総額”になります。とはいえ、名称だけを見ても実際にどんな費用が含まれるのかイメージしにくいものです。ここからは、4つの項目ごとにその内容を丁寧に解説していきます。
建物本体工事費 ― 家の中心となる費用

建物本体工事費とは、文字通り“家そのもの”を建てるために必要な費用です。家づくりの総額の約70%を占める非常に大きな部分で、主に次の4つで構成されています。
▶ 建材費
基礎や柱、梁などの構造を支える建材のほか、断熱材や内壁・外壁材、屋根材などが含まれます。これらは家の性能や耐久性に直結するため、素材やグレードの選択によって費用が大きく変動します。
▶ 設備機器の費用
キッチン、浴室、洗面台、トイレ、給湯器など、日々の暮らしを支える設備が含まれます。最近では太陽光発電や高効率給湯器などを取り入れる方も増えており、設備選びが予算に与える影響はとても大きくなっています。
▶ 工事を担当する職人の費用
大工をはじめ、給排水、内装、外装、板金、防水といった多くの専門職人が家づくりの現場に携わります。それぞれの専門技術に支えられて家は完成するため、人件費も本体工事費の重要な構成要素となります。
▶ 工務店・ハウスメーカーの管理費
設計、現場管理、打ち合わせ、各種調整など、品質を確保するために必要な管理業務の費用です。会社によって料金体系が大きく異なるため、比較の際は注意が必要です。
付帯工事費 ― 見落とされやすい「もうひとつの費用」

本体工事費に加えて必ず発生するのが「付帯工事費」です。相場は300〜600万円ほどで、総額の約20%を占めます。「本体工事が終われば家は完成」と思われがちですが、実際には生活に欠かせない外構やインフラ整備といった多くの暮らしを始めるうえで欠かせない工事が必要となります。これらの工事は本体費用には含まれていないことがほとんどのため、どんな費用が必要になるのか知っていることが大切です。
▶ 外構工事
駐車場のコンクリート、庭、フェンス、門柱など家の外まわりを整える工事です。外構の仕上がりは住み心地にも大きく影響するため、後回しにしにくい重要な工事といえます。
▶ ライフライン工事
水道、ガス、電気を建物に引き込むための工事です。土地の状況や道路との距離によって費用は大きく変動し、想定していた金額よりもさらに費用が追加となるケースも少なくありません。
▶ 設備の追加購入・取り付け工事
本体価格には含まれない照明、カーテン、エアコン、コンセントの追加など、生活必需設備の購入と取り付け工事が必要です。細かな積み上げで意外と大きな金額になります。
▶ 古い家の解体費用
建て替えの場合は既存建物の解体が必要になります。構造や立地条件によって費用は大きく異なり、100〜400万円ほどと予算の幅も大きく、余裕をもって予算を計画する必要があります。
▶ 地盤改良工事費
地盤調査の結果、地盤が弱いと判断された場合は地盤改良工事が必要になります。建築プランや土地の地盤の内容によって異なりますが100〜300万円ほど費用が必要になるケースが一般的です。
これらの付帯工事費は本体価格には含まれないため、最も見落とされやすく、予算オーバーの原因になりがちな部分です。
諸費用 ― 小さな支払いが積み重なって総額10%に

諸費用とは、建築工事会社や不動産会社への支払い以外に必要となる費用のことを指します。だいたい総額の10%程度を見込んでおくと安心です。これらの諸費用は支払先も異なるため、細かな支払いが多く、気付かないうちに膨らみがちな費用だからです。
たとえば、不動産取得税、金融機関に支払う住宅ローンの手数料、家屋調査士や司法書士へ支払う登記費用、印紙代、火災保険・地震保険など、契約や手続きに関わるさまざまな費用があります。1つひとつは大きくなくても、合計では数十万〜100万円以上に達することも珍しくありません。
また、その他に地鎮祭や上棟式といった費用や引っ越し費用、そして家具や家電を新調する場合はその購入費も必要です。新生活の準備にも意外と費用がかかることを忘れてはいけません。
土地購入費 ― 住まいの基盤となる大きな柱

注文住宅を検討されている方にとって、土地購入費は避けて通れない大きな費用です。土地代には購入価格のほかに、仲介手数料、登記費用、固定資産税・都市計画税の日割り、造成工事費などが必要になる場合があります。その他にも、土地の形状や周辺環境によっては追加工事が発生することもあるため、土地探しの段階から総額を意識しておくことが大切です。
具体的な総額イメージと「誤解されやすいポイント」

以下のモデルケースでは、
- 本体工事費:2,100万円
- 付帯工事費:600万円
- 諸費用:300万円
- 土地購入費:1,500万円
この合計で総額4,500万円となっています。
この数字からわかるように、建物本体価格は総額の半分以下であり、家づくりを本体価格だけで判断することができないということが分かります。「建物本体が2,000万円なら予算内だろう」と考えると、後々大きな予算ギャップが生まれるリスクがあるのでご注意ください。
家づくり成功のための“正しい予算の立て方”

予算を考える際には、まず「何に優先してお金をかけたいのか」を明確にすることが大切です。
・間取りや内装を重視したい場合は住宅会社選びから
・立地条件を最優先したい場合は不動産会社への相談から
それぞれスタート地点が変わります。優先したいものの金額が分かったら、その他の必要経費である諸費用や付帯工事費を算出します。そして、家づくりの総予算から、優先する対象の金額と必要経費を引き、残った予算から「建物に使える金額」「土地に使える金額」を決めていくことが理想的です。
まとめ
家づくりには、建物以外にも多くの工程と費用が存在します。そのため、建物本体の価格だけを基準に判断してしまうと、最終的に大きな予算オーバーにつながりかねません。
本体工事費、付帯工事費、諸費用、土地代という4つの柱をしっかりと把握し、総額を見据えて計画することが、金額を心配せずに家づくりを進めるための最も大切なポイントです。
そのうえで、まず考えたいのは「土地と建物、どちらを優先するのか」ということ。こだわりたい部分がどこにあるのかを明確にし、それぞれの専門家に相談しながら、自分たちが望む住まいを実現するためにどれくらいの費用が必要なのかを把握することからスタートしてみてください。
