建物建築後に変えるのが難しい、大切な駐車スペースのつくりかた

マイホームづくりで意外と悩むのが 「駐車スペースをどれくらい確保するべきか」 という問題です。建物の配置とのバランスや使い勝手、今後の車の買い替えも考えて決定するのが大切ですが、実際にどこを注意して決めていけば良いのか?…そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

この記事では、これから家づくりを進めていく方に向けて、失敗しないための駐車計画のチェックの仕方について、ご紹介をして参ります。

目次

 STEP1:まずは「現在と未来の車のサイズ」を知る

駐車場づくりを始める時、最初に行なうのが今乗っている車の大きさを正しく把握することです。これを曖昧なまま進めてしまうと、「ミニバンに買い替えたら車庫に入らない」「助手席側から降りられない」といったトラブルが起きやすくなります。そうならないためにも、まずは車検証や車の公式HPから正確なサイズを確認しましょう。

■ 車種別の一般的なサイズ目安

  • 軽自動車
    全幅:1,480mm
    全長:3,400mm
  • 小型車・中型車
    全幅:1,700mm
    全長:4,100〜4,700mm
  • ワンボックス車(ミニバン)
    全幅:1,700mm
    全長:4,800mm
  • 大型車
    全幅:1,850mm
    全長:5,000mm

家に住む年数を考えると、車も必ず一度は買い替えるはず。そのため、現在の車だけではなく将来買い替える可能性のある車の大きさも考慮しながら、ゆとりのある駐車場サイズを計画しましょう。特に子育て世帯でミニバンに乗り換える予定がある場合は、あらかじめ広めに確保しておくのがおすすめです。

STEP2:駐車場の幅は“乗り降りの快適さ”で決まる

建築のプロであれば建物の配置の段階で車の止め方も考慮して提案をしてくれているはず、と考えがちですが、実際に完成してから駐車を試みると「乗り降りが大変だった」という後悔が少なくありません。実は経験の浅い設計士がプランを作成していたり、外構計画の苦手な設計士がプランを描くとが駐車スペースの計画が最低限度のスペースに設定されていることもあります。そのため、プランを提案されたまま受け入れるのではなく「自分でも確認する」こと大切です。
ここでは、駐車場のストレスのひとつとしてあげられる「乗り降りのしづらさ」を回避するために、確認すべきポイントについて、ご紹介をして参ります。

人が横を通れる幅は約60cmのため、これをもとに以下の基準を設けると失敗がありません。

● 基本の考え方

  • 運転席側に60cm、助手席側に30cm
  • 両側から乗り降りしたいなら 左右とも60cm以上

つまり「車幅+120㎝」の幅をとって設計すると、毎日の乗り降りをスムーズに行なうことができます。

STEP3:奥行きは前後80〜100cmのゆとりが必須

奥行きは単純に「車の長さ」だけで決めてしまいがちですが、実際には、前後に余裕が必要です。奥行に余裕がないと、車の頭が前面道路にはみでるといった事態が起こる可能性があります。また、日常の使い勝手にも大きく影響するポイントです。例えば、トランクルームの荷物を出し入れする際に、外壁や境界ブロックにぶつかってしまい、出し入れがしづらいといったことになってしまうことも。そのため、奥行きを確認することは大切なポイントです。

● 基本の考え方

  • 車長+80〜100cm

例:全長4.7mの中型車
→ 推奨奥行き:5.5〜5.7m

 STEP4:道路幅や敷地形状で「駐車しやすさ」が大きく変わる

駐車スペースは前面道路との関係性によって使いやすさが大きく変わります。駐車場は「停めるスペース」と「入れるためのスペース」は別だということを忘れてはいけません。同じサイズでも、前面道路や敷地の接道幅によって難易度はまったく違います。そのため、土地を購入する際に、前面道路の幅を確認することは極めて重要です。

● 前面道路と接道幅の目安

  • 道路幅4m
    → 接道面 3.6m以上 を推奨(内輪差を考慮)
  • 道路幅6m
    → 接道面 3.0m以上
  • 道路幅8m以上
    → 接道面 3.0m以上
     ※ただし交通量が多い可能性があるため注意

前面道路の幅や接道幅が数字上は足りていても、実際に駐車しづらい土地は少なくありまません。例えば、前面道路の交通量が多いと、駐車をするのにストレスがかかります。このように、敷地の条件が車の出し入れに直結するため、土地購入前に必ず確認しておきましょう。販売図面だけでは分からないことも多いため、必ず現地で確認しまてください。

STEP5:駐車場の素材はデザインと耐久性で選ぶ

駐車場の素材は、見た目の印象だけでなく、耐久性やメンテナンス性、将来的な使いやすさにも大きく影響します。主な床材は「砂利敷き」「コンクリート」「アスファルト」「インターロッキング」の4種類があり、それぞれに特徴があります。

代表的な床材には以下の4種類があります。

  • 砂利敷き
    施工費が安く、自然な印象が特徴。ただし耐久性は低く、雑草対策など定期的なお手入れが必要。
  • コンクリート
    最も一般的で耐久性が高く、メンテナンスも最小限。長く安心して使いたい方におすすめ。
  • アスファルト
    駐車場としての機能性は十分だが、戸建てではデザイン性の面から採用は少なめ。
  • インターロッキング
    色や形が豊富で高級感があり、水はけも良好。コストは高めだが満足度が高い。

床材は家の外観や外構デザインと合わせて選ぶことで、統一感のある住まいになります。初期費用だけで判断せず、将来の使いやすさと維持管理まで見据えて検討しましょう。

 STEP6:プラスαの大切な外構計画のポイント

駐車スペースの寸法や配置が決まったら、次に考えたいのが「使いやすさ」と「安心感」を高めるためのプラスαの外構計画です。住み始めてからの満足度に大きく左右する重要なポイントでもあります。日々の駐車動作をスムーズにするために、ぜひ押さえておきたい点をご紹介します。

駐車スペースの勾配(スロープ角度)は慎重に決める

駐車場の土間コンクリートは、一見すると平らに仕上げた方が使いやすそうに感じますが、実際には適度な勾配が欠かせません。コンクリートは水を通さないため、完全に水平だと雨水が溜まり、水たまりや汚れの原因になってしまいます。そのため、駐車スペースには 2〜3%程度の勾配 を設け、自然に雨水が流れるようにするのが基本です。

● 基本の考え方

  • 勾配は 2〜3%程度

ただし、勾配をつけすぎると車を停めにくくなり、特に車高の低い車では 底を擦ってしまうリスク も高まります。見た目や排水性だけでなく、「実際に毎日駐車する」という視点で、無理のない角度に抑えることが大切です。

排水計画は“水の行き先”までイメージする

勾配とあわせて重要なのが、雨水の排水計画です。駐車場にコンクリートを打つ場合、雨水がどこへ流れていくのかを事前に設計しておかないと、特定の場所に水が溜まりやすくなります。排水溝や側溝、雨水桝へスムーズに水が流れるよう、以下の点に注意が必要です。

  • 勾配の向き
  • 排水口の位置
  • 敷地全体の高低差

特に玄関アプローチや隣地側に水が流れ込まないよう配慮することで、将来的なトラブルを防ぐことにもつながります。

まとめ

建築のプロが設計を行うからといって、建物の配置や駐車スペースの計画をすべて設計士任せにしてしまうのは注意が必要です。建物の配置も駐車計画も、一度つくってしまえば、壊さない限り変更できない部分だからこそ、計画段階での確認が非常に重要になります。建築プランを確認する際は、間取りや外観デザインだけでなく、敷地内での建物の配置や駐車スペースの取り方についても、必ず設計士から十分な説明を受けるようにしましょう。車の出し入れはスムーズか、乗り降りに不便はないか、日常使いを具体的にイメージしながらチェックすることが大切です。また、図面だけでは分かりにくい点が多いのも事実です。勾配がどれくらいになるのか、実際に立ったときの感覚はどうかなど、気になる点は遠慮せず直接確認してみることをおすすめします。

駐車スペースの良し悪しは日々の暮らしに直結します。「毎日使う場所だからこそ、しっかり確認する」この意識を持つことが、家づくりで後悔しないための大切なポイントです。

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