
住宅購入や家づくりを考え始めると、これまで聞いたことのない専門用語が次々と出てきます。その中でも、特に分かりにくい用語のひとつが「北側斜線(きたがわしゃせん)」です。
土地探しをされている方のなかにも、聞いたことはあるけれど、
「自分には関係なさそう」
「説明を聞いたけどよく分からない」
そう感じている方も多いのではないでしょうか。
しかし、北側斜線は、土地選び・間取り・家の大きさに大きく影響するルールのひとつです。特に、予算や立地を優先し、「理想の家の大きさがギリギリ入りそうな土地」を検討している方は、注意しておきたい制限のひとつと言えるでしょう。
知らずに進めてしまうと、「こんなはずじゃなかった…」と後悔する原因にもなります。
この記事では、北側斜線についての基礎知識や注意点を、初心者の方でもイメージしやすいように、ご紹介していきます。
北側斜線とは何か?

北側斜線とは「北側に建つ家の日当たりを守るため、建物の高さを制限する」というルールです。「北側のお隣さんが、ずっと日陰にならないようにしましょう」という考え方が根幹にあります。
当然のことですが、新たに家を建てようとしても、建物の形も高さも自由に建てられるわけではありません。特に住宅街では、周囲の住環境を守るためのルールが細かく定められています。北側斜線は、そのなかでも「近隣への配慮」を目的とした代表的な規制の一つです。
なぜ「北側」だけが厳しく制限されるの?

「どうして北側だけなの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
理由はとてもシンプルです。
それは、住宅と太陽の位置関係が大きく関係しています。日本では、太陽の光は主に南側から入るため、昔から住宅では南側に窓を多く設けたり、明るい南側にリビングを配置する間取りが多く採用されてきました。
では、もしあなたの家の南側に高い建物が建ってしまったら、どうなるでしょうか。どのような問題が起こるか、少し想像してみてください。
まず、日当たりが悪くなることは容易に想像できると思います。さらに日当たりが悪くなることで、暮らしにはさまざまなデメリットが生じます。
例えば、太陽が出ている日中でも部屋が暗く感じるようになり、洗濯物も乾きにくくなります。それだけではありません。太陽の光が十分に入らないと、冬場は特に室内が冷えやすくなり、暖房を手放せなくなります。その結果、電気料金の負担が増えたり、身体への負担が大きくなったりすることもあります。
このような暮らしの弊害が生じないようにするために、北側斜線は、北側に建つ家が南からの一定の太陽の光を奪わないようにするための仕組みとして設けられているのです。
北側斜線はどんな形になる?用途地域別にイメージして理解しよう

北側斜線には「見えない斜めの線」が引かれる

北側斜線が適用される土地では、敷地の北側の道路境界線もしくは隣地境界線から上に向かって斜めの見えない線が引かれます。そして、その斜めの線を超えて建物を建ててはいけません。というのが北側斜線です。
北側斜線に配慮した建物は、北側に向かって建物が低くなっていたり、屋根が急勾配で斜めになっていたり、2階の北側部分を削って建てられていることがあります。
北側斜線は用途地域によって厳しさが変わる

北側斜線は、どの土地でも同じ条件というわけではありません。土地ごとに定められている「用途地域」によって、斜線の厳しさが変わります。ここでは、代表的な用途地域ごとに北側斜線のルールがどのように変わるのかについてご紹介を致します。
① 北側斜線が特に厳しい3つの地域

まず、最も厳しいルールが適用されやすいのが、「第一種低層住居専用地域」、「第二種低層住居専用地域」「田園住居地域」の3つの用途地域です。
この地域では、設計GL(基準となる地盤の高さ)から5mまでは、まっすぐ建てることができ、その先は、一定角度の斜線を超えない範囲で設計する必要があります。その一定角度の斜線とは、次の計算式で求められます。
「敷地北側からの水平距離×1.25」
② 中高層住宅エリアの北側斜線ルール

次に、北側斜線制限がかかる用途地域が「第一種中高層住居専用地域」と「第二種中高層住居専用地域」です。こちらは、3階建てや小規模マンションなどの建築も想定されている地域のため、第一種低層住居専用地域よりは緩やかな制限になっています。 この地域では、設計GLから10mまでは、まっすぐ建てることができ、その先は、一定角度の斜線を超えない範囲で設計する必要があります。
「敷地北側からの水平距離×1.25」
先ほどの低層住宅地域と比べると、5m → 10mと、倍の高さまで垂直に建てられるため、2階建ては比較的計画がしやすく、3階建ても検討できるといった違いがあります。
北側斜線が家づくりに与える影響

ここからは、実際に北側斜線制限のかかった土地で建築した場合に、どんな影響が発生する可能性があるかについて、ご紹介をしたいと思います。
① 思っていたより家が大きく建たない
土地を見た段階では、「この広さなら十分な家が建ちそう」と思っていても、北側斜線の影響で2階の床面積が減ってしまったり、部屋数を減らす必要がでてきたりということがあります。
特に、建てたい家の大きさに対してコンパクトな敷地を検討している場合は、ご注意ください。
②建物の形が複雑になり、費用に影響することも
北側斜線にかからないよう、最大限に家を建築しようとした場合に、屋根が複雑な形や勾配がきつくなる等、設計が複雑になることがあります。そこで気を付けていただきたいのが、設計が複雑になるということは、その家を建築する手間が増えるということです。つまり、建築費が高くなる傾向にあります。
土地選びで気を付けるべきポイント

北側斜線制限は、決して嫌煙されるルールではないことをお伝えさせてください。特に、「第一種低層住居専用地域」や「第二種低層住居専用地域」は、人々が生活を営みやすいエリアになっており、人気の土地が多く混在しています。
隣家の日射をきちんと考慮した設計が求められているということは、逆に言うと、そこに住む人々にとっては一定の日照を守ることができるということです。北側斜線制限で気を付けていただきたいのは、費用や立地を優先した故に、土地の面積を希望の建物面積のギリギリで建築しようとしている方です。どうしても、その土地が気に入ったということであれば、以下の点について住宅購入前に必ず確認してください。
✔ 建築会社に「北側斜線の影響」を聞く
素人判断は危険です。必ず購入前に、建築会社に土地の大きさは問題ないか?北側斜線制限の影響を受けそうか?等について建築する住宅会社に相談してみましょう。
✔ 将来の建て替えも考える
例えば、今は平屋を希望されているから問題ないと思っていても、将来2階建てにしたいと考える時が来るかもしれません。その時には、もしかしたら、希望の大きさの2階建てにすることはできないケースがあります。
北側斜線のメリット・デメリット

北側斜線は「制限」ですが、悪いことばかりではありません。「住環境を重視したい人」にとっては、安心材料になることも多いのを忘れないでください。
デメリット
- 家の大きさや形が制限される可能性がある
- 設計の自由度が下がる可能性がある
メリット
- 周囲に高い建物が建ちにくい
- 住宅街の落ち着いた環境が守られる
- 将来の日当たりトラブルが起こりにくい
まとめ
北側斜線は、お互いが気持ちよく暮らすためのルールのひとつです。住宅購入で後悔しやすいのは、「よく分からないまま進めてしまうこと」です。北側斜線を理解することで、土地選びを、より安心して進めることができます。
