
住宅を購入しようと考え始めた方なら、ローン相談や銀行の仮審査のタイミングで必ずと言ってよいほど出てくる用語があります。それが 「団体信用生命保険(だんたいしんようせいめいほけん)=団信」 です。
「聞いたことはあるけど内容まで詳しく知らない」
「ローンに必ず付いてくる保険ってくらいの認識」
「加入しないといけないみたいだけれど、どういうもの?」
このような声は非常に多く、実際、団信の理解度は住宅購入者の間でも大きく差があります。
しかし、団信はただの“おまけ”ではありません。
むしろ 家族の生活を根本から守る、住宅ローンにおける最も重要なリスク管理と言っても過言ではないのです。
この記事では、家づくりの検討をはじめたばかりの方に向けて、イメージしやすいように団信の基本から種類の違い、メリットや注意点、さらに加入の判断ポイントまで、丁寧にご紹介していきます。
団体信用生命保険(団信)とは?住宅ローンの“保証人の代わり”のようなもの

団信をひと言で説明すると、「住宅ローンの返済中に、加入者に万が一のことがあった場合、残りのローンを保険を肩代わりしてくれる仕組み」 です。住宅ローンは長期間(20年,35年,50年)で組み、返済していくことが基本となります。その返済の間には病気・事故・死亡といった予測不能なトラブルが起きる可能性がゼロではありません。もし、働けなくなって収入が途絶えれば、ローン返済は家族に重くのしかかります。そんな事態に陥った際に助けとなるのが、本日ご紹介する団信です。団信に加入をしていれば、このような万が一の事態でも残った住宅ローンを保険会社が代わって完済をしてくれるため、家族が家を失うリスクを減らすことができるのです。
● 実は団信は「銀行を守る」役割もある
住宅ローンを貸す銀行にとっても、借主が返済不能になるリスクは大きな課題です。団信は、銀行側の「貸し倒れリスク」を軽減する役割も果たしています。つまり団信は、「借りる側(家族)を守る保険」であると同時に、「貸す側(銀行)を守るための仕組み」の両方の性質を持つ、住宅ローンに不可欠な制度なのです。
なぜ団信が“必須”とされているのか?民間銀行とフラット35の違い

多くの人が「団信って基本的に加入しないといけないんでしょ?」と思っていますが、実は銀行によって扱いは異なります。
● 民間銀行:団信は原則必須
みずほ銀行、三菱UFJ銀行、地方銀行など、一般の金融機関では団信加入が住宅ローンの条件になっています。これは、「ローンの返済リスクを下げる」、「万が一の際にも返済が完了し貸し倒れを防げる」という理由からです。そのため、健康状態の告知で問題がある場合、通常の団信に加入できずローン審査が通らないケースもあります。
● フラット35:団信は“任意”
一方、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する「フラット35」は、団信への加入が任意となっています。しかし、団信に加入しない場合は「万が一の際のローン残高がそのまま家族の負担になる」という大きなリスクが残るため、実際には多くの利用者が団信(もしくは代替となる生命保険)を検討する傾向にあります。
また、団信が“任意”であるという点にはもうひとつ重要なメリットがあります。
それは 「他行で団信の審査に通らなかった方でも、住宅ローンを組める可能性がある」 ということです。民間銀行では団信の加入が原則必須となるため、健康上の理由で団信に加入できないとローン自体が組めません。しかし、フラット35であれば団信に加入しなくても借入が可能なため、持病のある方や健康状態に不安のある方にとって、選択肢を広げる大きなメリットとなります。
団信の種類は多様化の時代へ。どれを選ぶべき?

かつての団信は「死亡・高度障害」のみを対象とした非常にシンプルなものでした。しかし現在では保障内容が拡充され、さまざまな特約が選べるようになっています。ここでは代表的なものを紹介します。
(1)基本タイプ:死亡・高度障害
加入者が亡くなった場合や高度障害状態になった場合に、残りのローンがゼロになります。最も標準的な保障となっており、多くがこちらの加入を必須としています。
(2)三大疾病保障
「がん」「心疾患」「脳血管疾患」の三つを対象とした保障です。これらの疾病は治療期間が長く、家計にも大きな負担がかかるため、特約として付与される方も多い印象です。しかし、保険金支払いの条件はバラバラです。必ず条件のチェックを行いましょう。
≫≫例
・がんと診断された時点で保障が発動
・心疾患・脳疾患は60日以上働けない状態が続くこと
(3)八大疾病保障
三大疾病に加え、糖尿病、高血圧、肝疾患などを対象に含めた特約です。働けなくなるリスクをより広範囲でカバーすることができます。
(4)就業不能保障
病気や怪我で働けなくなり収入が途絶えた場合、一定期間返済を肩代わりしてくれる保障です。共働き家庭や、自営業者に人気があります。
(5)ワイド団信(持病のある人向け)
健康上の理由で通常の団信に加入できない人向けに、審査基準を緩和した団信です。ただし、「金利が0.2〜0.3%程度上乗せ」という条件や「通常より保険料が高い」という点がデメリットであります。
団信のメリット|家族に住宅ローンを残さない安心感

団信の最大のメリットは、加入者に万が一のことがあった際に、残った住宅ローンが完済される点です。住宅は資産であると同時に、家族の生活の基盤です。ローン返済が残った状態で家族に負担をかけてしまうリスクを避けられるのは大きな安心につながります。
✔ 保険料を別で支払う必要がない
団信の保険料は住宅ローンの金利に含まれている場合が多く、毎月の保険料を別途支払う必要がありません。
✔ 長期返済の精神的負担が軽減される
35年という長い返済期間の中で、いつ何が起きるかわかりません。団信に加入しているという安心感は、心理的な支えにもなります。
団信の注意点|加入前に必ず知っておきたい3つのポイント

メリットが多い団信ですが、注意すべき点もあります。
(1)健康状態の告知が必要
団信は生命保険の一種であるため、加入時には健康状態の申告が必須です。持病を申告しなかった場合、万が一の際に保険金が支払われない可能性があります。
(2)保障内容によって金利が変動する
特約を追加すると住宅ローンの金利が上がることがあります。金利上昇が返済総額にどの程度影響するのかしっかり把握することが重要です。
≫≫例
三大疾病特約 → 金利+0.2%
八大疾病特約 → 金利+0.3%
(3)銀行ごとに保障内容が異なる
同じ名称の特約でも、保障される条件が銀行ごとに違います。名前だけで判断せず、必ず条件を比較することが必要です。
団信の選び方|迷ったら見るべきポイント

団信は種類が増えているため、自分にどれが最適なのかわかりづらいという方も多いのではないでしょうか。ここでは選ぶ際のポイントをごしょうかいします。
✔家族構成
子どもが小さい場合:手厚い保障が安心
共働き:就業不能保障を検討
✔健康状態
持病がある場合はワイド団信の利用が現実的です。ただし、医師と相談しながら通常団信の審査通過の可能性も視野に入れましょう。
✔費用とのバランス
過剰な保障はコストを押し上げます。必要な保障と費用のバランスを考えることが大切です。
まとめ
団体信用生命保険(団信)は、住宅ローンという人生で最も大きな買い物を安心して進めるための重要な制度です。近年では特約の種類も増え、どこまで保障を付けるべきか悩まれる方も多く見られます。
まずは、ご自身がすでに加入している生命保険や医療保険の保障内容・保障額を把握したうえで、住宅ローンの団信で不足する部分を補うイメージで検討してみてください。保障を手厚くするほど安心感は高まりますが、その分、金利の上乗せや保証料が増えるため、毎月の返済額にも影響します。
住宅ローンは長期間にわたるため、無理のない返済計画であることが最優先です。保障内容とコストのバランスを考えながら、ご家族に合った団信の組み方を選んでみてください。
