窓の役割と断熱性能について考える

 

家のなかで室内外の熱(=エネルギー)の出入りが一番多いのは、どこかご存じですか?

答えは、「窓」です。

夏は窓の開口部から約7割の熱が流入し、冬は窓の開口部から約56割程の熱が逃げていくと言われています。つまり、窓の選び方は快適な住まいづくりで重要な鍵となります。

 

 

断熱材や窓の種類については、住宅性能に関心の高い人に注目されていますが、性能の話しは難しくて、住宅会社の提案に任せっきりになっているという方もいらっしゃるのではないでしょうか?

窓は、ただ外の景色を見るためのものではなく、採光や換気、断熱性、デザイン性など、家づくりに関わるさまざまな機能を担っています。この記事では、「窓の役割と窓の性能」について解説いたします。

目次

窓の役割

まず初めに、家づくりに欠かせない「窓」の役割について、ご紹介いたします。

1.快適な室内環境を保つため

先述した通り、窓から流出入していくエネルギーは大きいです。そのため、窓の性能の良し悪しで快適な室内環境を維持することができるかどうかが、決まります。断熱性能の高い窓を選べば、冬は窓からの冷気を防ぎ、室内の暖かい空気を外に逃がしにくくなります。反対に、夏は窓からの熱を遮断し、冷房効率を上げることで室内を涼しく保つことができます。窓が持つ「断熱性」や「遮熱性」は、快適な室内環境を維持するために重要なのです。

2.採光と換気で健康的な暮らしを実現

窓は、家の中に自然光を取り入れ、風通しを良くする役割を果たします。明るい自然光が入る家は、居心地がよく、精神的にもリラックスできる空間を作り出します。特に、リビングやキッチンなど、家族が長時間過ごす場所には十分な光が入るような窓の配置が大切です。また、換気は湿気やカビの発生を防ぐためにも重要です。窓の開閉がしやすく、通気性が良い窓を設けることで、室内の空気を循環させることができ、室内環境の質を保つことができます。最近の高断熱・高気密住宅では、換気システムと併用することで、より効率的な換気が可能です。

3.エネルギー効率を向上させるため、光熱費の削減が期待できる

窓の選び方によってエネルギー効率が大きく変わります。一般的に、断熱性が高い窓ほどエネルギーロスが少なく、冷暖房の効率が向上します。特に、二重ガラスやLow-Eガラスといった断熱性能の高い窓を選ぶことで、外気の影響を最小限に抑え、室内温度を快適に保つことができます。これにより、年間を通じて光熱費の削減が期待でき、お財布にも環境にも優しい暮らしが実現します。

4.デザイン性とプライバシー

窓は、家の外観や内装のデザインにも大きな影響を与えます。大きな窓を設置することで開放感を演出できる一方で、大きい窓は配置によっては、プライバシーが失われ、最終的には締めきって使われない窓となってしまうこともあります。だからこそ、設計時には隣接の土地の周辺環境を良く観察する必要がございます。近隣の家との窓の配置が重ならないよう、その窓が生きるように設計で工夫する必要があるからです。

 

窓の選び方は、住まいの快適性や省エネ性能に直結する重要な要素です。適切な断熱性能や採光、換気を確保することで、健康的でエネルギー効率の高い暮らしを実現することができます。また、デザインやプライバシーも考慮して、住まいに最適な窓を選ぶことで、より豊かな住環境を創り出すことができるでしょう。

窓の断熱性能

つづいて、窓の断熱性能の見方についてご紹介をして参ります。

断熱性能の基準:「U値とは?」

窓の断熱性能を表す指標のひとつがU値です。この値は、熱の伝わりやすさを示し、数値が低いほど断熱性が高いことを意味します。

– U値が低い=性能が高い 「冬は暖かく、夏は涼しい」住宅を実現
– U値が高い=性能が低い → 「外気温に左右されやすい」ため、室内が快適でなくなることも

窓の性能は、サッシの素材とガラスの組み合わせで、何倍も断熱性能が違ってきます。
次に、窓のガラスの種類やサッシの素材について、解説してまいります。

 

窓ガラスの種類と特徴

1. 単板ガラス(シングルガラス)

単板ガラスは、1枚のガラスで構成された最もシンプルなタイプの窓ガラスです。厚みは一般的に3mm〜6mm程度で、一昔前の家づくりでは、主流でした。

メリット

  • 価格が安い
    製造コストが低いため、設置費用も他の種類に比べてリーズナブルです。
  • 軽量で施工が容易
    軽いため、取り付けや取り扱いが簡単です。

デメリット

  • 断熱性能が低い
    外気温の影響を受けやすく、冬は冷え込みやすく、夏は熱が室内に入りやすいです。
  • 結露しやすい
    室内外の温度差が大きい場合、ガラス表面に結露が発生しやすいです。
  • 防音性能が低い
    外部の音を遮断する効果はあまり期待できません。

    2. 複層ガラス(二重ガラス)

    複層ガラスは、2枚のガラスの間に空気層やガス層(アルゴンガスなど)を設けた構造です。この空気層が断熱性を高めています。

    メリット

    • 断熱性能が高い
      空気層やガス層が熱の移動を抑えるため、夏の熱や冬の寒さを防ぎます。
    • 結露しにくい
      室内外の温度差が大きくても、ガラス表面の温度が外気温に近づきにくいので結露のリスクが減少します。
    • 防音性能が向上
      単板ガラスに比べて音を遮断する効果があります。

    デメリット

    • コストがやや高い
      単板ガラスに比べて製造や設置コストが高くなります。
    • ガス層の劣化リスク
      長期間使用すると、ガス層が抜けたり密封が弱まったりして性能が低下する場合があります。

     

    3. Low-Eガラス(Low Emissivity Glass:低放射ガラス)

    Low-Eガラスは、ガラス表面に特殊な金属膜(低放射膜)をコーティングしたものです。この膜が赤外線や紫外線を反射する効果を持ち、断熱性をさらに高めています。

    メリット

    • 優れた断熱性能
      冬は室内の熱を外に逃がさず、夏は外からの熱を反射するため、一年を通じて快適な温度を保ちやすいです。
    • 省エネルギー
      冷暖房効率を向上させるため、光熱費の削減に貢献します。
    • 紫外線カット
      紫外線をカットすることで、家具や床材の劣化・色あせを防ぐ効果があります。

    デメリット

    • コストが高い
      他のガラスに比べて価格が高く、初期投資が必要です。
    • 外観の色調に影響が出る場合がある
      コーティング膜の反射性能により、外から見た時のガラスの色合いが変わることがあります。

    4. トリプルガラス(三重ガラス)

    3枚のガラスと2つの空気層またはガス層で構成されたガラスです。寒冷地で採用されることが多いです。

    メリット

    • 最高レベルの断熱性能
      空気層が2層あるため、外気温の影響をほとんど受けません。
    • 防音性能が非常に高い
      外部の音を遮断し、静かな室内環境を提供します。

    デメリット

    • 非常に高価
      他のガラスよりも製造コストが高く、設置費用も上がります。
    • 重量がある
      ガラスが重いため、窓枠や建物の設計に負担がかかる場合があります。


    種類ごとの用途とおすすめポイント

    ガラスの種類 メリット デメリット
    単板ガラス 安価で取り扱いやすい 断熱・防音性能が低い
    複層ガラス 断熱・防音性能が向上 単板ガラスよりやや高価
    Low-Eガラス 高断熱・省エネ効果、紫外線カット 価格が高い
    トリプルガラス 最も高い断熱・防音性能 価格が非常に高く、重い

     

     

    窓サッシの種類と特徴

    窓の断熱性能において、ガラスだけでなく「サッシ(窓枠)」の選択も非常に重要です。サッシは窓の構造を支えるだけでなく、断熱性や耐久性、メンテナンス性に影響を与えます。

    1. アルミサッシ

    アルミサッシは日本の住宅で最も広く使用されてきたサッシ素材です。軽量で耐久性があり、加工が容易なため、住宅用窓のスタンダードとして長い歴史があります。

    メリット

    • 耐久性が高い
      錆びにくく、紫外線や雨風にも強い素材です。特に外部に面する窓ではその耐候性が重宝されます。
    • 軽量で扱いやすい
      軽いため、大きな窓や開閉頻度の高い窓に適しています。
    • コストが安い
      他のサッシ素材に比べて製造コストが低く、手軽に導入可能です。
    • デザインの自由度が高い
      加工性が良いため、さまざまな形状や色に対応可能です。

    デメリット

    • 断熱性能が低い
      アルミは熱伝導率が高いため、外気の熱や冷気が室内に伝わりやすいです。
    • 結露が発生しやすい
      特に寒冷地では室内外の温度差が大きいため、結露が起きやすくなります。

     

    2. 樹脂サッシ

    樹脂サッシは、ポリ塩化ビニル(PVC)などの樹脂で作られたサッシです。断熱性能の高さから、寒冷地を中心に採用されています。

    メリット

    • 高い断熱性能
      樹脂は熱伝導率が非常に低く、外気温の影響を受けにくい素材です。
    • 結露しにくい
      サッシ自体が冷たくならないため、結露を抑える効果があります。
    • メンテナンスが容易
      腐食や錆びに強く、メンテナンスの手間が少ない素材です。
    • 静音性が高い
      防音性能にも優れており、静かな室内環境を実現します。

    デメリット

    • コストがやや高い
      アルミサッシに比べて製造コストが高く、初期費用が増えることがあります。
    • 耐候性がやや劣る
      紫外線や熱に弱い特性があり、長期間使用すると色あせや変形が起こる可能性があります。
      ただし、最新の樹脂素材では改善されつつあります。
    • アルミと比較すると強度がやや低い
      アルミに比べると強度がやや低く、大きな窓や高層建築物には不向きな場合があります。


    3. アルミ樹脂複合サッシ

    アルミ樹脂複合サッシは、外側をアルミ、内側を樹脂で構成したハイブリッド型のサッシです。それぞれの素材の利点を組み合わせたバランスの良い選択肢として人気があります。

    メリット

    • 断熱性能が高い
      室内側に断熱性の高い樹脂を使用しているため、外気温の影響を受けにくいです。
    • 耐候性が高い
      外側にアルミを使用することで、雨風や紫外線による劣化を防ぎます。
    • 結露しにくい
      室内側が樹脂なので、結露を大幅に軽減します。
    • 強度が高い
      アルミの強度を活かし、大きな窓や高層住宅にも対応できます。

    デメリット

    • コストが中程度
      アルミサッシよりは高価ですが、樹脂サッシよりはリーズナブルです。
    • デザインの自由度がやや低い
      外側のアルミ部分はデザインの選択肢が豊富ですが、樹脂部分の色や
      質感は制限がある場合があります。


      4. 木製サッシ

      木製サッシは、天然木を使用した高級感のあるサッシです。温かみのあるデザインと優れた断熱性が特徴です。

      メリット

      • 高い断熱性能
        木材自体が断熱性に優れており、外気温の影響を受けにくいです。
      • 高級感のあるデザイン
        天然木の美しさと質感が、特にデザイン性を重視する住宅で評価されています。
      • 環境に優しい
        再生可能な天然素材であり、エコロジー志向の住宅に適しています。

      デメリット

      • メンテナンスが必要
        定期的な塗装や防腐処理が必要で、手間がかかる場合があります。
      • 耐候性が低い
        雨風や紫外線による劣化が起こりやすい素材です。
      • コストが高い
        他のサッシに比べて価格が高く、導入には予算の確保が必要です。


        サッシの種類別比較表

        サッシの種類 断熱性能 耐久性 メンテナンス性 コスト デザイン性
        アルミサッシ 低い 高い 高い 安い 高い(自由度大)
        樹脂サッシ 高い 中程度 非常に高い やや高い 中程度
        アルミ樹脂複合サッシ 高い 高い 高い 中程度 高い
        木製サッシ 非常に高い 低い 低い 非常に高い 非常に高い

         

         

        まとめ

        窓の選び方は、住まいの快適性や省エネ性能に直結する重要な要素です。適切な断熱性能や採光、換気を確保することで、健康的でエネルギー効率の高い暮らしを実現することができます。そして、デザインやプライバシーも考慮して、住まいに最適な窓を選ぶことで、より豊かな住環境を提供することができるでしょう。家づくりを考える際には、「窓」の配置や種類についても、是非こだわってみてください。

        最後までご拝読いただき、ありがとうございました。

         

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