注文住宅で涼しい住まいを実現するための鍵を握る「ηAC値」

注文住宅を建てる際に「断熱性能」や「耐震性」などに注目する方は多いと思います。しかし、見落とされがちな指標のひとつに「η AC値(イータ エーシーち)」というものがあります。この数値は、室内の快適さやエネルギー効率に深く関わる重要なポイントです。
本コラムでは、η AC値の基礎知識から、住宅選びでなぜ重視すべきかを分かりやすくご紹介いたします。

目次

ηAC値とは何か

η AC値とは、「冷房期の日射熱取得効率」のことを指します。簡単に言えば、「どれだけ太陽の熱が家の中に入ってくるか」を数値化したものです。主に夏場における住宅の性能を測る指標で、この値が小さいほど、外からの熱を遮り、冷房効率が高くなるかということを示しています。住宅性能というと「UA値」が有名ですが、「η AC値」は新しい住まいが夏を快適に過ごすことができる器かどうかを測る大切な指標の一つです。この値を知っているだけで、住宅選びの際に、夏の過ごしやすい住まいかどうかを簡単に判断することができます。

η AC値の数値が高い住宅
太陽の熱が多く室内に入り込みやすい構造をしており、夏場は室温が上がりやすくなる。

η AC値の数値が低い住宅
日射を上手に遮断し、冷房の効率が良く、室内環境を安定させることができる。

省エネ性能とη AC値の関係性

省エネ基準の概要_国土交通省資料

日本では、省エネ住宅の基準として「住宅の外皮性能」とともに、「一次エネルギー消費量」が評価されます。この中でη AC値は、「冷房期における日射取得をどの程度抑えているか」を評価する重要な要素です。たとえば、ZEH(ゼッチ/ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)や認定低炭素住宅、長期優良住宅などの認定を受ける際には、η AC値が一定以下であることが義務づけられています。つまり、η AC値は単なる快適性の指標にとどまらず、国の補助金制度の補助金や税制優遇にも関係する重要な要素なのです。

省エネ基準の概要_国土交通省資料

ηAC値とUA値の違い

ηAC値とUA値は、どちらも住宅の性能を示す指標ですが、異なる側面に焦点を当てています。ηAC値は、主に冷暖房効率に関するもので、冷房における電力消費と冷房能力の比率を示します。この値が高いほど、効果的にエネルギーを利用できることになります。一方、UA値は住宅の断熱性能を示す指標です。具体的には、住宅の外皮を通じてどれだけ熱が移動するかを表します。UA値が低いほど、優れた断熱性を持ち、外部の熱の影響を受けにくくなります。このように、ηAC値とUA値は、冷暖房効率と断熱性能という異なる視点から住宅の快適性を評価するため、住宅選びの際は、それぞれの性能を確認することが大切です。

注文住宅における涼しい住まいの重要性

夏場の猛暑には、住まいの涼しさが家族の健康や生活の質に影響を与えます。また、家族全員が快適に過ごすためには、設計段階から気候や地域に合った工夫を施すことが大切です。ここでは、涼しい住まいの重要性についてご紹介を致します。

涼しい住まいのメリット

夏の暑さ対策は、家族の健康維持や快適な生活環境のために非常に重要です。特に、熱中症や脱水症状のリスクが高まる夏においては、涼しい環境を整えることは健康リスクを軽減することへ繋がります。特に、子どもや高齢者には快適さが必要です。また、適切な暑さ対策を講じることで、空調設備が安定して機能しやすいため、冷房の使用頻度を減らし、無駄なエネルギー消費を抑えることができるため、光熱費を削減することも可能です。さらに、快適な空間は心身への負担を減らすことができるため、家族のストレスを減少させ、心の安らぎを与えることができます。

夏の暑さ対策

夏の暑さ対策には、さまざまな手法があります。住宅性能を向上させるための設備や日射を遮るための庇(ひさし)やシェード、さらに窓の配置や大きさを工夫することによって、外気の暑さをシャットアウトし、室温を快適に保つことができます。ここでは、夏の暑さ対策に有効な手法についてご紹介をさせていただきます。

エアコンと換気システムの活用

エアコンと換気システムを上手に活用することが重要です。特に、エネルギー効率の良いエアコンを選ぶことで光熱費の節約にもつながります。また、冷房運転時には、エアコンのフィルターを定期的に掃除し、効率を最大限に引き出すことが大切です。一方、換気システムは、外の新鮮な空気を取り込みつつ、湿気や熱がこもらないようにする役割があります。換気をしっかりと行うことで、室内の空気質も向上し、快適な住環境を維持することができます。エアコンと換気システムを組み合わせて利用することで、効率的に快適で涼しい住まいを実現することができます。

ひさしやルーバーの設置

ひさしやルーバーの設置は、夏の暑さ対策に効果的な方法です。ひさしは、窓の上部に取り付けられる部分で、直射日光を遮る役割を果たします。これにより、室内が過度に熱くなるのを防ぎ、快適な温度を維持することができます。一方、ルーバーは、斜めに設置された板が並んでいて、日光を効率よく遮る一方で、風通しを良くすることが可能です。ルーバーを設置することで、屋外の新鮮な空気を取り入れつつ、居心地の良い環境を作ることができます。特に高性能住宅の場合、これらの設置は見た目にも美しく、機能的なエクステリアを演出できるため、おしゃれな住まいを目指す方にもおすすめです。

外付けブラインドの導入

外付けブラインドは、夏の暑さ対策に非常に効果的なアイテムです。通常のインテリア用ブラインドとは異なり、外に設置されるため、日差しを直接遮ることができます。このため、室内の温度上昇を大幅に抑えることができるのです。さらに、外付けブラインドは、遮光だけでなく、プライバシーの確保にも貢献します。外部からの視線を軽減することもできるため、家族層にとっても嬉しいポイントです。また、多くの外付けブラインドは自動化が可能で、リモコンやスマートフォンから操作できるものが増えています。これにより、手間をかけずに日差しの調整ができ、快適さをさらに向上させることができます。

涼しい住まいの設計ポイント

夏場の住まいの快適性を大きく左右するのが「窓の設計」です。窓は採光や通風といったプラスの役割がある一方で、日射熱の侵入というマイナス面も抱えています。そのため、窓の配置・サイズ・仕様によって、住まいの「涼しさ」が大きく変わります。特に、南側は冬場に太陽の光を多く取り込めるため、大きな窓を設けることが多いですが、逆に夏場は強い日差しが室内に入ってしまいます。そこで有効なのが前述した庇(ひさし)や軒(のき)の設置です。夏の高い角度の太陽光を遮り、冬の低い角度の光だけを取り込むように設計することで、年間を通して快適な室内環境を実現できます。

まとめ

注文住宅を選ぶ際に、確認するべき性能値の一つが「ηAC値」です。ηAC値の性能が高い住宅は、冷房効率が良く、夏の暑さ対策として非常に効果的です。快適な住環境を手に入れるためには、住宅選びや設計の段階でこの値を確認することが大切です。特に、開放的な空間を好まれる方は、窓の配置や大開口部分には、どんな日射遮蔽の工夫がされているか、総合的に判断する必要があります。大きな窓は、冬には太陽の光で家のなかを暖かくしてくれる心強い味方ですが、夏には容赦ない光が家のなかに侵入し、部屋中に熱がこもり、エアコンが利きにくい家になってしまいます。そのため、家族全員が快適に過ごせることが求められる注文住宅においては、 「ηAC値」を考慮した設計が不可欠といえるでしょう。

これから住宅購入を検討する方は、ぜひη AC値にも目を向けて、最適な住まいを選んでください。

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