太陽と自然と共存する気持ちの良い暮らしの工夫~パッシブデザインについて~

近年、住宅設計において「パッシブデザイン」という概念が注目を集めています。

これは、エネルギー消費を抑えつつ、自然の力を活用して快適な住環境を実現する設計手法です。特に、日本のように四季がはっきりしている地域では、パッシブデザインを適用することで、冷暖房の負荷を軽減しつつ、年間を通じて快適な室内環境を維持することができます。

本コラムでは、パッシブデザインの基本的な考え方やそのメリットについて解説していきます。

目次

パッシブデザインとは?

パッシブデザインとは、太陽光、風、熱といった自然エネルギーを積極的に活用し、冷暖房機器などの人工的なエネルギー消費を最小限に抑えた住宅設計の考え方です。「パッシブ(passive)」とは「受動的な」という意味があり、機械設備に頼らず自然の力を利用することを指します。この考え方の根底には、「建築そのものが快適な環境をつくり出す」という発想があります。例えば、冬場に日射を効率よく取り込み、夏場には日射を遮ることで、冷暖房に頼らずに快適な温熱環境を実現することが可能になります。

パッシブデザインの理解を深めるための基礎知識 – 太陽高度 –

太陽高度とは、太陽が地平線からどれくらいの高さにあるかを示す角度のことです。この角度は、観測地点の緯度、季節、時刻によって変化します。太陽が真上にある場合は90度、地平線と同じ高さにある場合は0度になります。

太陽高度の変化
太陽高度は1日の中でも変化し、朝や夕方には低く、昼頃に最も高くなります。また、1年を通しても変化し、夏至の日には最も高く、冬至の日には最も低くなります。



例)日本(東京付近)
夏至( 6月21日頃 ):正午の太陽高度は約78度
冬至(12月21日頃):正午の太陽高度は約31度

このように、季節によって太陽の高さが大きく変わるため、住宅設計やエネルギー効率を考える際に重要な要素となります。

太陽高度を考慮しない住宅設計のリスク

太陽高度を考慮することで、適切な日射取得や日射遮蔽を設計でき、快適な室内環境を実現できます。逆に、太陽高度を無視した設計を行うと、夏は暑くなりすぎ、冬は寒くなりすぎるという問題が発生します。結果として、冷暖房の負荷が増え、光熱費が高騰し、快適性が損なわれます。

:直射日光が入りすぎて室温が上昇し、エアコンの効きが悪くなる
:日射を取り込めず室内が寒くなり、暖房費が増加
昼間:自然光が不足し、照明の使用が増える
通風:熱がこもりやすく、風通しが悪化

こうした問題を防ぐためには、適切な日射取得・遮蔽・通風計画を行い、太陽の動きを活かした設計が不可欠です。

パッシブデザインの5つの要素

①断熱・気密

住宅の断熱性能と気密性能を向上させることで、室内の熱の出入りを最小限に抑えることができます。外気温の影響を受けにくくなるため、夏は涼しく冬は暖かい室内環境を維持しやすくなります。断熱材の種類や施工方法、窓やドアの気密性も重要なポイントです。

②日射取得

冬場に太陽光を効果的に取り入れることで、室内を自然に暖めることができます。特に、南向きの大きな窓を適切に配置し、断熱性の高いガラスを採用することで、日射取得を最大化できます。また、床や壁に蓄熱性能の高い素材を使用することで、昼間に取り込んだ熱を夜間まで有効活用できます。

③日射遮蔽

夏場には強い日差しを遮ることが重要です。軒や庇(ひさし)、可動式のシェード、植栽などを活用することで、直射日光の室内への侵入を防ぎ、室温の上昇を抑えることができます。特に、西日対策として外付けブラインドやルーバーの活用も効果的です。

④自然風利用

風通しの良い設計にすることで、室内の空気を効果的に循環させることができます。窓の配置を工夫し、風の通り道を確保することで、エアコンに頼らず快適な温度を保つことが可能になります。吹き抜けや通風用の小窓を設けることで、効率的な換気を促進できます。

⑤昼光利用

照明の使用を減らすために、自然光を最大限に活用する工夫も大切です。トップライト(天窓)やハイサイドライト(高窓)を設けることで、室内に均一な自然光を取り入れ、明るく開放的な空間をつくることができます。また、壁や天井の反射を利用して光を拡散させることも有効です。

パッシブデザインのメリット

1. エネルギー消費の削減

パッシブデザインの大きなメリットの一つは、冷暖房エネルギーの削減です。例えば、冬は日射を積極的に取り込む設計をすることで暖房負荷を減らし、夏は庇(ひさし)やブラインドを活用して日射を遮ることで冷房負荷を抑えることができます。結果として、電気代の節約につながり、環境負荷も低減できます。

2. 快適な室内環境の実現

パッシブデザインを取り入れることで、一年を通じて温度変化が少なく、快適な室内環境を実現できます。例えば、以下のような工夫があります。

・適切な窓配置と断熱性能の向上により、冬の寒さや夏の暑さを軽減
・自然換気や通風を考慮した設計で、夏でもエアコンに頼りすぎず快適に過ごせる
・日射取得と日射遮蔽のバランスを取ることで、室温を適切にコントロール

こうした工夫により、エアコンの使用を抑えつつ、過ごしやすい住まいを実現できます。

3. 健康への良い影響

パッシブデザインは住まいの健康性向上にも貢献します。例えば、断熱性や気密性を高めることで、冬の寒い時期に室内と外の温度差が少なくなり、ヒートショック(急激な温度変化による健康リスク)を防ぐことができます。また、適切な換気計画により、室内の空気を清潔に保ち、カビやダニの発生を抑制することも可能です。

4. 環境負荷の低減

冷暖房設備の使用を減らすことで、二酸化炭素(CO₂)の排出を削減し、地球環境への負担を軽減できます。特に、再生可能エネルギーと組み合わせることで、より持続可能な住環境を実現できます。環境問題が深刻化する現代において、パッシブデザインは持続可能な社会の実現に大きく貢献します。

5. 長期的なコスト削減

パッシブデザインは、初期の設計・施工にコストがかかることもありますが、長期的に見ればランニングコスト(電気代、修繕費)が大幅に削減できます。エネルギー消費が少なくなるため、光熱費の節約が可能になり、家計に優しい設計となります。また、耐久性の高い建材を使用することで、メンテナンスの手間や費用も抑えられます。

まとめ

パッシブデザインは、自然の力を活かしながら快適でエネルギー効率の高い住まいを実現する設計手法です。適切な断熱・気密性の確保、日射の取得と遮蔽、自然風や昼光の活用を組み合わせることで、冷暖房や照明の使用を最小限に抑えながら、年間を通じて快適な住環境を維持できます。また、パッシブデザインを取り入れることで、エネルギー消費の削減や光熱費の節約だけでなく、健康的な暮らしや環境負荷の低減といったメリットを得ることもできます。太陽高度や風の流れを考慮し、自然エネルギーを活かした設計を行う等の初期設計の工夫次第で、より快適で持続可能な住まいを実現できるため、家づくりを考える際には、ぜひパッシブデザインの視点を取り入れてみてはいかがでしょうか?

eSmy-homeでは、埼玉県越谷市を中心に千葉県の一部の地域で「高断熱・高気密」の家をご提供しております。自然と素直に向き合ったパッシブデザインの設計を強みとしておりますので、ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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